~老後コンシェルジュが語る「想いを紡ぐ」生前準備~
こんにちは。終活アドバイザー・薬剤師・ファイナンシャルプランナーの資格を持った老後コンシェルジュの坂井と申します。
私はこれまでに多くの方の「終活」や「老後の生き方」をサポートしてきましたが、とりわけおひとりさまの終活のご相談が増えています。
独身のまま高齢期を迎える方や、子どもがいないご夫婦であっても、どなたかを頼らずに老後の準備を進めなくてはならないケースが珍しくなくなってきたのです。
そんな中、私が強く感じるのは、「終活の中で不動産整理を後回しにしてしまう方が多い」ということです。
家・土地・マンションなどは決して小さな財産ではありませんし、多くの手続きや将来への展望が絡み合うもの。
ところが、実際に蓋を開けてみると何も分からないまま放置してしまい、慌てて対処するというケースが目立ちます。
本記事では、私が今まで見てきた事例を交えながら「おひとりさま終活」における不動産整理の重要性についてじっくりお伝えしていきたいと思います。
意外と知られていない登記簿の確認方法や相続税評価、さらには空き家対策についても詳しく触れますので、ご自分のケースに照らし合わせながらお読みいただければ幸いです。
曖昧な部分も正直あるかもしれませんが、それは個々の事情が異なるからこそ。
ぜひご自身の状況と照らし合わせて、参考にしていただければと思います。

おひとりさま終活とは? 不動産整理の位置づけ
これは、配偶者やお子さんがいない方に限らず、「実質的に頼れる身内が少ない」「遠方に住む家族と距離がある」などの事情を抱えた方も含まれます。
終活全体の流れと不動産整理
・エンディングノートの作成
・遺言書の準備
・財産整理(預貯金、有価証券など)
・葬儀やお墓の手配
・医療・介護に関する希望の明確化
ここに不動産整理が加わるのが、とても大事な視点なのです。
とりわけおひとりさまの場合は、もし自分に万が一のことがあったとき、家や土地の管理や処分を誰がどのように行うのかが大きな課題になります。
名義や評価額、共有状態などが複雑に絡み合っていると、それだけで相続や死後の事務手続きが煩雑になってしまうのです。
ポイント:
おひとりさま終活では、財産の多寡に関わらず、不動産の状況をしっかり把握し、将来的にどうしたいのかを事前に考えておくことが不可欠です。
突然の別れで気付かされた不動産整理の重要性
事例:70代女性のケース
・突然、長年連れ添ったご主人を亡くした
・持ち家があるが、権利関係や名義など一切把握していない
・ご主人がすべて管理していたため、自分は何も分からず途方に暮れている
この方は非常に不安定な状態でした。
「主人に任せきりにしていたから…」という言葉を今でも思い出します。結果的に、登記関係の確認や住宅ローン、名義変更など、調べることが多岐にわたりました。
「お子さんや頼れるご家族がいるのなら、情報を共有していたり、誰かがサポートしてくれるのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、最近は子どもが遠方に住んでいる、あるいはそもそも子どもがいないという方も多く、すぐに助けを求められないケースが少なくないのです。
「そのときになってから」では間に合わない
長年元気だった人が突然倒れることもあれば、病気で先が長くないと分かっていても、事前に整理ができないまま最期を迎える方もいます。
だからこそ、今動けるうちに動くというのが、終活全体の大切な考え方なのです。
おひとりさま終活で押さえるべき不動産整理の3つのポイント
1. 登記簿確認の意外な重要性
購入時に何となく書類を受け取ったきり、タンスの奥にしまい込んだり、そもそもどこにあるかも分からない……ということが多いのです。
抵当権や所有者名義のチェック
・抵当権が残っていないか?
亡くなった親の代から住宅ローンが完済されていない状態や、完済していても抵当権を抹消していないケースが思いのほか多いです。
・所有者が誰になっているか?
「自分の名義だと思っていたが、実は違った」というケースも。
共有名義の場合、相続するときの手続きがより煩雑になる可能性があります。
私の体験:抵当権が相続手続きを大幅に遅らせたケース
実際、私がサポートしたご家族では、亡くなったお父様の時代の抵当権が残っており、相続手続きに数カ月も余計な時間がかかってしまったことがありました。
おひとりさまだと、こうした問題の発覚がさらに遅れる可能性があります。自分が認知症などで判断能力を失う前に、登記簿を確認しておくことは極めて重要です。
2. 相続税評価額を知ることの安心感
しかし、不動産の価値は思いがけず高い場合があるため、事前にざっくりとでも把握しておくことが大切です。
・相続税評価額の算出
路線価や固定資産税評価額などをチェックし、どの程度の税額が見込まれるかイメージすると良いでしょう。
・相続の準備がしやすくなる
もし相続人が甥や姪になる場合でも、どの程度の財産があるか、評価額がいくらかを知っているだけで話し合いが圧倒的にスムーズになります。
50代会社員の方の声
先日、50代の会社員の方から「両親の家の評価額を事前に知っておいて、本当に助かった」というお話を伺いました。生前に評価額を把握していたため、相続税の支払い方法や分割方法をきちんと計画し、兄弟間でも大きなトラブルなく進められたとのこと。おひとりさまの場合、「自分が亡くなったあとの相続人がそもそも誰になるのか」を含め、早めの情報整理が欠かせません。
3. 空き家問題への事前対策
おひとりさま終活では、自分が施設に入ったり亡くなったりしたあとに、誰も住まなくなる家が放置される事態が起こりえます。
空き家を放置すると…
・近隣への迷惑(雑草や建物の老朽化など)
・資産価値の下落
・防犯上のリスク
事前に検討できる選択肢
・売却
・賃貸(短期・長期)
・利用しやすい形にリフォームし、シェアハウス化するなど多様な活用法
82歳の父親が施設に入ることになった家族の実例
あるご家族では、お父様が高齢者施設に入るタイミングで実家が空き家に。
子どもたちは遠方暮らしで頻繁には通えないため、処分するか維持するか悩んでいました。
最終的に地域の不動産会社と連携し、賃貸活用を決断。リフォームを手頃に施すことで借り手が付き、そこから得られる家賃収入が施設費用の一部となり、精神的にも経済的にも安心できる形になりました。
補足:
このような空き家対策は「すぐに決断しないといけない」というわけではありませんが、少なくとも将来どんな選択肢があるのかを調べておくと、いざというときに落ち着いて行動できます。
不動産整理がおひとりさまにとって重要な理由
1.情報共有の相手が少ない
一人暮らしや近しい親族がいない場合、自分が把握していない情報は誰も知らない可能性があります。
2.財産の中で不動産が占める割合は大きい
例え預貯金が少なくても、家や土地などの不動産があると相続税や名義変更の問題が大きくのしかかります。
3.トラブルが発生してもサポートをすぐに得られない
おひとりさまはトラブルの発見も遅れがち。早期対策が必要です。
4.生前に売却や賃貸などの活用を検討しておくと、老後資金の足しにもなる
不動産は活用次第で生活を潤す源泉になります。
つまり、「何も分からないまま放置する」のがいちばんリスクが高いということ。
おひとりさま終活では、日常生活や医療・介護だけでなく、不動産整理にもぜひ目を向けてほしいのです。
おひとりさま終活と不動産がもたらす3つのメリット
1. 心理的負担の軽減
不動産の名義や評価額などが明確になっていれば、相続人や死後事務を請け負う人が手続きを進めやすくなります。
・家族や周囲のサポートを得やすい
おひとりさまでも、信頼できる友人や専門家に「こういう状態です」と説明しやすくなるので、孤立感を軽減できます。
2. 経済的なメリット
相続税や不動産取得税など、負担すべき税金の見通しが立てやすくなります。
・賃貸活用による収入確保
「将来は施設に入るかもしれない」「体が不自由になったらマンションに住み替えるかもしれない」という方が、不動産を賃貸に出すことで家賃収入を得て老後資金を補うこともできます。
・維持費の最適化
一戸建てやマンションの維持費を見直し、不要な部分を削減するきっかけになります。
3. 社会への貢献
放置されがちな空き家が活用されることで、地域コミュニティが活性化する可能性があります。
・次世代への円滑な資産継承
相続時に慌てずスムーズに手続きを行えるため、甥や姪、あるいは遠い親族にとっても大きな助けとなります。
老後コンシェルジュとしての私の想い
その中で、「人が亡くなるまでのプロセス」にしっかりと寄り添う必要性を強く感じ、終活アドバイザーやファイナンシャルプランナーの資格を取得し、「老後コンシェルジュ」として活動するようになりました。
不動産は「家族の思い出の宝庫」
特に、長年住んできた家を手放すことが心理的に負担になる方も多いです。
しかし、終活で不動産整理を進めることは「かけがえのない記憶を大切にする」作業の一部だと私は考えています。
どうしても手放すのが辛いなら、誰かに住んでもらって大事に使ってもらう選択肢もある。
思い出の一部を写真や映像で残し、残りは次世代に譲るという考え方もある。
いずれにしても、自分が元気なうちに選択肢を探っておくことが、後悔のない道を見つけることにつながります。
今すぐできる第一歩
ですが、最初の一歩は意外とシンプルです。
1.自宅の登記簿を取り寄せてみる
法務局に申請すると入手できます。インターネットで申請することも可能になっており、意外と簡単です。
2.家族や信頼できる人と不動産の将来について話し合う
おひとりさまの場合でも、信頼できる友人や専門家に「この家を将来どうしようか?」と相談するだけで、大きく前進します。
3.専門家に相談する(必要に応じて)
行政書士や司法書士、弁護士、不動産会社など、必要に応じて頼ってみましょう。
とくに相続や税務に強い専門家は心強い味方になります。
エンディングノートの活用
合わせておすすめしたいのが、エンディングノートに自分の不動産に関する情報を記載しておくこと。
「どこに土地があって、どういう使い方をしてほしいのか」「共有名義人がいる場合は誰と共有しているのか」を明記しておくと、後々大きなトラブルを防げます。
まとめ:不動産整理は「想いの整理」
実際にあった和やかなケース
先日ある息子さんから、「親の家の整理をきっかけに、久しぶりに家族でゆっくり話ができました。
これも終活のおかげですね」と言われました。じっくり話し合うことで、それまではギクシャクしていた家族関係がほぐれるきっかけにもなったそうです。
終活は、「単なる手続きの整理ではなく、家族や大切な人とのコミュニケーションの場をつくる行為」と言っても過言ではありません。
おひとりさま終活だからこそ、「自分には関係ない」と閉じこもらず、ぜひ自分の心情や状況に合わせて不動産整理にも取り組んでみてください。
最初のハードルは高いと感じるかもしれませんが、一度踏み出してしまえば案外スムーズに進むこともあります。
外部リンクのご案内
最後に
ここまで「おひとりさま終活」の視点で、不動産整理の重要性や具体的な取り組み方についてお話ししてきました。
実際に行動に移すと、ご自身の安心感が想像以上に高まりますし、周囲も「何かあったとき、どうすればいいか分かる」状態になるため、トラブルや混乱を大幅に減らすことができます。
もし少しでも不安を感じたり、整理が難しいと感じたりしたときは、一人で抱え込まずに専門家や信頼できる人を頼ってください。
私も老後コンシェルジュとして、「あなたらしい人生の最終章」を支えるお手伝いをできれば嬉しく思います。
今この瞬間が、終活の始め時かもしれません。思い立ったが吉日――あなたの未来が、穏やかで笑顔あふれるものになるよう、心から応援しています。