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終活の手続き、「後回し」が最大のリスク?実体験から語る事前準備の大切さ

終活の手続き、「後回し」が最大のリスク?実体験から語る事前準備の大切さ

こんにちは。老後コンシェルジュの坂井です。

私は、終活アドバイザー・薬剤師・ファイナンシャルプランナーの資格を持ち、日頃から「おひとりさま終活サポート」に力を入れています。

「おひとりさま」という言葉を耳にすると、「自分には関係ないかも」「なんだか寂しそう」といったイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれません。

でも、実は「おひとりさま」と呼ばれる状況は誰にでも起こり得るものです。

今はパートナーや家族がいても、将来のことは誰にもわかりません。そこに少しの曖昧さがあるのが人生というものですよね。

そんな不透明な将来を少しでも明るく、そして安心して迎えられるように、早めの終活準備は本当に大切です。

でも人間、「終活」や「老い」といったキーワードは、どこか自分とは関係のない遠い話のように感じてしまいがち。そして、「まだ早い」「落ち着いたら考えよう」と、どうしても後回しにしがちです。

ここでは、私自身がこれまでに見聞きし、体験してきた事例をもとに、「おひとりさま終活」を進めるうえでの注意点や心構えについて、一緒に考えてみたいと思います。

突然の入院で初めて気づいた準備不足:Aさんのケース

まず最初にご紹介したいのが、数年前に私がサポートしたAさん(70代女性)のお話です。
Aさんは、ご主人を数年前に亡くされてから「おひとりさま」として暮らしておられました。
明るい方で、ご自宅での一人暮らしをエンジョイしているように見えましたので、私もあまり強く「終活準備」を促すことはありませんでした。
「坂井さん、私はまだまだ元気だから、終活なんて早いわよ」と、にこやかに笑っていらしたのを思い出します。

ところが、ある日、Aさんが体調を崩して緊急入院されることになりました。
入院直後はご家族(お子さんが遠方に一人いらっしゃるだけ)も動揺され、病院や役所に提出する書類や手続きを進めるのに右往左往。
Aさんご自身はご高齢ということもあって、判断能力が十分ではない状態になってしまい、意志確認がスムーズにできなかったのです。そこからが大変でした。

・医療保険や介護保険の確認
・入院費の支払い方法
・手術や治療の同意書関連

これらは本来であれば、もっと元気なうちに整理したり、誰がどのように管理するかを話し合っておいたりするとスムーズです。
でもAさんは「まだ大丈夫」という考えから、詳細はほとんど未整理でした。

結果として、Aさんの入院から退院までの期間、ご家族の方は「どこに何の書類があるのかわからない」「口座の手続きはどうするのか」といった細かいことで手いっぱいに。
入院中なのに、病院より役所の窓口にいる時間が長くなってしまった、と後日談で聞かされたときは私も胸が痛みました。
Aさん自身も「こんなはずじゃなかった」「いろいろ迷惑をかけてしまってごめんなさい」と、元気を取り戻してからは落ち込むことが多かったように思います。

「終活=自分のため」ではなく「大切な人のため」でもある

Aさんのケースから痛感したのは、「終活」の準備は自分だけのためではなく、周りの大切な人を助けるためでもある、ということ。
特におひとりさまの場合、自分が思っている以上に、周囲のサポート体制はギリギリになってからでないと動きづらいものです。
家族が遠くに住んでいる、あるいはまったくいないという場合も珍しくありません。

私が見てきたなかで、とくに「おひとりさま」におすすめしたいのは、もしものときに頼れる人のリストや連絡先をあらかじめ作成しておくことです。
たとえば、近隣に住む親戚、友人、頼りになる知人。
病院や役所の手続き代行を頼める私のような終活アドバイザーなどの専門家の連絡先も含めてまとめておく。
さらに「自宅のどこに何が保管されているのか」もメモ書きしておくと、いざというときに周囲が混乱するリスクがかなり軽減されます。

少しずつ前へ進める:Bさんの後悔

私がファイナンシャルプランナーとして関わった事例としては、60代のBさん(男性)が印象的です。Bさんはご夫婦で暮らしていましたが、お子さんはいらっしゃらないため、将来的には実質的におひとりさま状態になることを予想していました。それでも「妻が元気だから問題ないだろう」とあまり深く考えず、終活の準備には積極的ではなかったのです。

しかし、あるときBさんのお父様が急に介護が必要となり、「親の介護手続き」のために市役所や銀行、年金事務所などを走り回るはめになりました。
話を聞いてみると、そこで初めて自分の老後についても不安を感じるようになったそうです。
Bさんは「いずれは本格的に終活しなくちゃ」と思いながら、どこから手をつけたらいいか曖昧なまま放置していたとのこと。

結局、Bさんはお父様の介護のために時間も手間もかかり、経済的な負担も想像以上に大きいことに気づきました。
介護保険の申請書類や医療費控除の領収書管理、税務上の手続きなど、事前に分かっていればもっとスムーズだったはず。
Bさん自身も「家族の介護ばかりに追われて、自分の老後準備は後手後手になってしまっている」と後悔を口にされていました。

私はBさんに、「完璧を求めるのではなく、とりあえず始めてみませんか?」と声をかけました。
たとえば、公的年金以外の収入源をどう確保するか、自分が入っている保険の内容が本当に自分のニーズに合っているかなどをゆるやかにチェックするだけでも、だいぶ視界が開けます。
曖昧に思えていた「終活」という言葉が、少しずつ具体的な作業として見えてくるからです。

医療費と介護費用の還付申請で見えた「書類整理」の大切さ

私は薬剤師としての経験から、病院の窓口や調剤薬局で患者さんやそのご家族の悩みを直接うかがう機会も多くありました。
とくに高齢になってくると、通院や入院、介護サービスの利用などで医療費・介護費用がかさむ場合が多いです。
確定申告のタイミングで医療費控除や介護費用の還付申請をすることで、負担を少しでも軽減できる可能性がありますが、それには必要書類の整理が欠かせません。

・毎月の領収書をきちんとファイリングする
・介護保険料の支払い証明書をなくさないように保管する
・年金関係の書類も含めて、一括で管理できるファイルをつくる

こうした地道な作業は、元気なうちから少しずつ始めるのがおすすめです。
「領収書をもらったらこのファイルに入れるだけ」といった簡単なルールを作っておくだけでも、後々の負担は雲泥の差です。
おひとりさまの場合、自分以外に整理してくれる人がいないケースが多いですから、特に重要性が高いと言えます。

ある患者さんは、入院生活が長引いた結果、退院後に医療費控除の申請をしようとしたところ、肝心の領収書があちこちに散乱してしまい、半分以上は見つからずあきらめることになったそうです。
「面倒くさくてもやっておけばよかった」と嘆いていましたが、そのお気持ちは本当によくわかります。
元気なときでも雑多な書類の整理は大変ですし、ましてや病気のときや介護が必要なときにはさらに難しくなります。
だからこそ、日常的にできる範囲の整理習慣をつけておくことが、結果的に自分を助けることにつながるのです。

住民票や戸籍謄本の取得もスムーズに:早めに流れを把握する

終活アドバイザーの視点としては、役所での諸手続きに関して早めに「流れ」を把握しておくのも大切だと思います。
おひとりさまの場合、たとえば、相続の問題や年金手続き、遺族年金などの制度の対象外かどうかなど、自分に関連しそうな制度とそうでない制度を混同してしまうことがあります。

・住民票や戸籍謄本をどこでどのように取得するのか
・年金事務所や市区町村の窓口に持参すべき書類は何か
・介護認定の申請はどう進めればいいのか

これらは、あらかじめざっくりとでも把握しておくと、実際に必要になったときに慌てずに済みます。
私自身も以前、両親の介護に直面した際、戸籍謄本の取得や年金関連の問い合わせで何度も役所へ行き、書類が足りなくて出直したり、窓口で話が通じず待たされたりとバタバタした経験があります。
今思えば、「もっと要点をまとめてから行けばよかったな」と後悔ばかり。
そういう小さなストレスが積み重なると、「終活なんて嫌だ」という気持ちにもなりかねません。

だからこそ、「完璧じゃなくても早めに概要だけでも押さえておく」という姿勢が大切だと感じるんです。
これは実際に経験してみないとわからないもの。
私自身も、「終活アドバイザーなのに、なんだかんだで後手後手になってしまった」と振り返りながら、今改めて心に刻んでいるところです。

「おひとりさま」は情報共有が課題?でも諦めないで

家族がいると、それなりに情報共有がしやすい側面があります。
たとえば、重要書類の保管場所を話し合ったり、緊急時の対応について相談したり。ただ、おひとりさまの場合は「自分以外に話す相手がいない」「話すほど親密な間柄の友人がいない」と感じる方も少なくありません。

しかし、そうした場合も「自分だけの終活ノート」を用意しておくのがおすすめです。
これは市販の「エンディングノート」でも構いませんし、シンプルなノートやパソコンのメモ帳でもいいんです。
ポイントは、自分だけがわかるように書くのではなく、他人が読んでもある程度理解できるようにまとめること。

たとえば、
・自分が利用している銀行口座やカードの一覧
・加入している保険の連絡先や契約内容
・もしものときにどんな医療を希望するのか
・緊急時に連絡してほしい人の名前・連絡先

こういった内容を、できるだけ平易な表現で書いておくのが理想です。
あまりにも専門用語や抽象的な表現ばかりだと、第三者には分かりづらいですし、逆に細かすぎても混乱のもとです。
ここでも「曖昧さを残す」ことが悪いわけではありません。
たとえば「○○銀行に口座があるけど、いくら入っているかはわからない」「この保険の内容はいまいち理解していない」といった書き方でも、一切情報がないよりはずっとマシです。

私の父の介護を通して学んだこと

実は最近、私の父が体調を崩してしばらく介護が必要になりました。
普段は私は終活アドバイザーとして多くの方のお手伝いをしている立場ですが、いざ父親に介護が必要になると、やはり不安や戸惑いは大きかったです。

書類の整理と保管
・父の保険証や介護保険証、年金手帳などをひとまとめに
・月別の領収書ファイルを作成
・「このファイルがどこにあるか」は家族にも知らせる

必要な手続きのチェックリスト
・「介護認定の申請はどう進めるのか」
・「どこの窓口にいくときにはどんな持ち物が必要か」
・「郵送でも申請できるのか」など

家族との情報共有
・兄弟や親戚がいる場合、定期的に連絡を取り合い、経過報告をする
・介護のサービス内容や費用について理解を深める
・認知症の可能性がある場合には、将来的な成年後見制度などを視野に入れる

私の場合、幸いにも身近に私の活動を理解してくれる家族がいたので、比較的スムーズに情報共有ができました。
でも、おひとりさまの場合はこうはいかないかもしれません。
だからこそ、早めに相談できる専門家を見つけておくことも大事だと強く感じました。

おひとりさまの終活は「孤独」なのか?

ところで、おひとりさま終活に取り組むとき、寂しさや不安を感じるのは自然なことです。
「もし自分が入院してしまったら、誰が面倒をみてくれるのか」「亡くなった後の手続きは、いったい誰が行うのか」。
こうした疑問や葛藤を抱える方は、実はとても多いです。

ただ、私がこれまでサポートしてきたおひとりさまの方々を見ていると、自分の人生をしっかり整理し、最期まで自分の意志を大事にする生き方というのは、必ずしも孤独ではないのだと感じます。
周囲とのコミュニケーションが減ってしまいがちでも、その分「自分自身との対話」を深めていくなかで、新しいつながりを見つける方もいらっしゃいます。
地域のボランティアに参加したり、同世代の友人やオンラインコミュニティと交流を始めたり
終活をきっかけに「自分のペースで人生を楽しむ自由」を感じる方もいるんですよね。

一方で、「もしものとき」に身寄りがいないからこそ、公的サービスや信頼できる専門家を活用することも重要になります。
たとえば、行政の見守りサービスを受けて、定期的に電話や訪問などで安否確認をしてもらう
あるいは、任意後見契約や死後事務委任契約などの制度を利用して、自分が亡くなった後の手続きを専門家に依頼する。
こうした仕組みを整えておけば、おひとりさまでも最後まで安心して暮らし続けられる可能性が高まります。

完璧を求めすぎないで、一歩ずつ進めよう

私自身も含め、「完璧を目指したくなる」気持ちは正直よく分かります。
「あれもこれもしっかり決めておかないと、周りに迷惑をかけてしまうんじゃないか」というプレッシャーもありますよね。
でも、終活における「完璧」という状態は、実は存在しないと考えています。
なぜなら、私たちの人生は常に変化していくからです。

・健康状態が変わるかもしれない
・住む場所が変わるかもしれない
・人間関係や経済状況が変わるかもしれない

だからこそ、「今できる最善の準備」に少しずつ取り組むことが大切で、途中で状況が変わったら、その都度修正すればいいんです。
私も「昔立てた計画が、今の状況にはまったく合わない」という経験を何度かしてきました。
それでも、何もない状態からゼロスタートするよりも、少しでも形にしておいた計画を修正する方が、はるかに楽でした。

Cさんの言葉:「今、始めるべきだったんですね」

先日、おひとりさま終活についてご相談に来られたCさん(65歳女性)は、「坂井先生、私はまだ間に合いますか?」と真剣な表情で質問されました。
お話を聞くと、Cさんは以前から「自分はおひとりさまだし、終活も必要かな」と思いつつも、「なんとなくまだ先の話かな」と後回しにしていたそうです。

ところが、親しいご友人が急に体調を崩して入院する事態を目の当たりにし、「あれ、もしこれが自分だったらどうする?」と急に不安になったといいます。
実際、友人の手続きのサポートをしようにも、どの書類をどこで手に入れるかさっぱりわからず、自分も知らないことだらけだったことで危機感が高まったとのことでした。

私はCさんに「もちろん今からでも間に合いますよ」とお伝えしました。
むしろ、「まだ早いかなと思うタイミングこそがスタートに最適」です、と。
なぜなら、余裕があるときこそ、じっくり準備に取りかかれるからです。
切羽詰まってから行動すると、どうしても抜けや漏れ、そして焦りが生じます。

Cさんは「そうか、今始めるべきだったんですね」とホッとした表情を浮かべ、少しずつ必要な書類のリストアップやエンディングノートの準備を始めました。
彼女のように、一歩踏み出すだけで気持ちが軽くなる方は多いと思います。

最後に:おひとりさま終活は「自分らしく生きる」ための作業

ここまで、「おひとりさま終活」について、私の実体験やご相談者のエピソードを交えながら、事前準備の大切さやポイントをお話ししてきました。
私が本当にお伝えしたいのは、終活は「死」だけにフォーカスしたものではないということ。
むしろ、「自分らしく今を生きる」ためにこそ大切な作業だと考えています。

・自分の大切な思い出や持ち物を整理して、自分自身がこれまで歩んできた道を振り返る
・将来的な医療や介護の希望を考えることで、心の準備をしておく
・必要なお金や手続きの流れを押さえておくことで、不安が和らぐ

おひとりさまという立場は決して特別なものではなく、誰にでも訪れ得る現実です。
そして、そこには不安だけでなく、自分のペースで人生をデザインできる自由さもあるのだと、私は多くの方を見ていて思います。

完璧を求めすぎず、曖昧なところがあってもかまいません。
まずは始めてみることが肝心です。
私も、老後コンシェルジュとして、終活アドバイザーとして、薬剤師として、ファイナンシャルプランナーとして、そして一人の人間として、皆さんと同じように日々模索しながら生きています。
専門的な知識や経験を活かしつつも、「人は誰しも不安を抱えて生きている」という事実に寄り添いながら、少しでも安心して老後を迎えられるようにお手伝いしていきたいと願っています。

もしこの記事を読んで、「自分はまだ早いかな」「でもちょっと気になるかも」という気持ちが少しでも生まれたなら、そのタイミングこそが一歩踏み出す合図かもしれません。
後回しにしてしまうことが、最大のリスクになることだってあります。
何か気になることや不安なことがありましたら、どうぞ遠慮なくご相談ください。
一緒に、無理のない範囲で、一歩ずつ進めていきましょう。

追伸

人生の中で「終活」を意識するのは、決して暗いことでも悲しいことでもありません。
むしろ、自分の人生をしっかり見つめ直し、「今できることは何か」「どんな老後を送りたいのか」を考えるきっかけになります。
とくに、おひとりさまの場合は、自分を守る行動を自分自身でとる必要があります。
しかし、それが同時に自分らしく自由に生きる手段でもあるのです。

どうか、「終活って、やらなきゃいけないけど面倒だし、寂しいイメージしかない」と思わずに、少しでも前向きに取り組んでみてください。
私もそのお手伝いを全力でサポートさせていただきます。
一緒に、悔いのない人生をデザインしていきましょう。